家紋用語集2
主に着物で用いられる紋の用語を集めてみました。
紋を知る上でベースとなる用語が大半です。
※それぞれ五十音順
※本用語集は大宮華紋森本内の用語集を再編したものです。
※少しずつ追加していきます
家紋用語其の二(着物に関する紋の事柄)
- 藍鏡(あいかがみ)
紋場の丸い平面を鏡に見立てて、藍色をバックに紋を写し出す彩色技法。本来は文様の彩色技法。※藍のバック以外にも紅鏡、白鏡などもある。
- 五つ紋(いつつもん)
着物や羽織に付ける紋の数で一番多く、格式が最も高い。略式としては三つ紋、一つ紋がある。
背紋は1つ。背筋衿付けより1寸5分が紋の天。
袖紋は2つ。両袖後ろ、生地巾の中央、袖山より2寸が紋の天。
前紋は2つ。両胸、生地巾の中央、肩山より4寸が紋の天。
この寸法は一般的な約束事であり、体型により変更の可能性もある。
- 糸目(いとめ)
友禅染めの文様を染め上げる際に、輪郭線に防染として置く糊を「糸目糊」という。糊はでんぷん糊やゴム糊を使い、筒先から糸を引くように置いていく。染め上がりは白く、友禅染めの特色である。
- 色上絵(いろうわえ)
本来の墨上絵ではなく、顔料や染料を用いた色の上絵の事。白抜きされた紋場に表す場合(白抜き色上絵)と無地場に表す場合(素描き色上絵、色描き紋)がある。
- 色描き紋(いろかきもん)
素描き色上絵。
無地場に染料や顔料などの色で上絵を施す。
- 上絵(うわえ)
紋の形を表す線。一般の染め抜き紋は墨上絵。
- 上絵師(うわえし)
紋章を表すラインを上絵といい、その上絵を描く絵師のこと。
- 押絵紋(おしえもん)
加賀で生まれたとされる。背縫いの無い子供用の一つ身に、魔よけとして母親が背守(せまもり)としてつけたもの。
- 鏡紋(かがみもん)
江戸時代中期に現れた、家紋を砂地形に染めたもの。当時の鏡の裏には砂地形に似た小さな点突起があったことから名付けられた。
- 加賀紋(かがもん)
江戸時代中期から流行したおしゃれ紋。加賀から始まり全国的に広まった。定紋の周りを友禅模様で飾った大きな紋。後には定紋のない絵だけのものも現れた。現在では多彩に表現されたおしゃれ紋の総称となっている。
- 描き紋(かきもん)
刺繍紋に対して紋章を描いて表す。染め抜き紋や素描き紋の事。
- 陰紋(かげもん)
白抜きされた紋場に複線の上絵で紋章を表す。家紋の表現方法で、日向(ひなた)を公式とし陰を略式、または地色との兼ね合いで用いられたり、女紋としても活用される。総陰(そうかげ)、細中陰(ほそちゅうかげ)、中陰(ちゅうかげ)、太中陰(ちゅうかげ)などがある。
- 飾り紋(かざりもん)
お洒落紋の総称。家紋ではなく多彩で文様的なもの。
大きなものが多い。
- 鹿子紋(かのこもん)
江戸時代中期に流行った、疋田(ひった)絞りで染め上げた紋。
鹿子のことを疋田、目結(めゆい)とも言う。絞り染めの一種で子鹿の背の斑点に似ている事からこの名が付いた。
- 切付紋(きりつけもん)
貼付紋(はりつけもん)とも言う。別の生地に描いた家紋を切り抜いて貼り付けたもの。古物の弱った生地の描き直しや変更に用いられる。また、貸衣裳などにも利用される。
- 黒紋付(くろもんつき)
一般的には白抜き五つ紋の付いた黒無地の着物や羽織。男女共第一礼装。(女性は喪服のみ)黒紋付きが第一礼装と定められたのは明治以降のこと。それは異文化交流によ り、モーニングやタキシードなどの洋服の正装に合わせたとされている。
- 彩色紋(さいしきもん)
色で紋章を表したもの。大宮華紋も彩色紋。
- 仕入れ紋(しいれもん)
業界用語で通紋のこと。既製品のことを業界では「仕入れ」とび、「誂え」と区別している。量産時代には五三の桐などの通紋を、あらかじめ加工し商品化していたことからこのように呼ばれた。
- 刺繍紋(ししゅうもん)
縫い紋の事。カジュアル目的として家紋やおしゃれ紋を刺繍で表したもの。糸は色糸、白糸、金糸、銀糸など。縫い方も様々である。
- 白鏡(しろかがみ)
古い友禅技法で、鏡に見立てた白をバックに友禅を彩色する。他に藍鏡、紅鏡がある。
- 白抜き色上絵(しろぬきいろうわえ)
白抜きされた紋場に色を使って上絵を描いた紋章。
- 白抜き墨上絵(しろぬきすみうわえ)
白抜きされた紋場に墨で上絵を描いた紋章。一般の「染抜き紋」のこと。
- 素描き色上絵(すがきいろうわえ)
無地の紋場に色の上絵のみで紋章を表す。色描き紋。
- 素描き紋(すがきもん)
白抜きせず、直接生地に上絵のみで紋章を表す。
- 墨上絵(すみうわえ)
墨で上絵を描いたもの。一般的な染め抜き紋に用いる手法。
- 摺り込み紋(すりこみもん)
家紋を色の面で表す。上絵はない。
- 背紋(せもん)
着物や羽織の背に付く紋章のこと。衿付けから下1寸5分の所に紋の天がくるように入る。背守りの意味もある。
- 染め抜き紋(そめぬきもん)
フォーマルを目的とし、染めものに加工されたもの。白抜きされた紋場に墨で上絵(線)が施されている。刺繍紋ではない。
五つ紋、三つ紋、一つ紋と分けられ、数が多いほど格式が高いとされている。表現法は大まかに日向(ひなた)、中陰(ちゅうかげ)、陰(かげ)、と分けられ、日向が一番格式が高い。しかしながら格式からいうと表現法よりも数が多い方が優先される。例えば、日向一つ紋よりも中陰の三つ紋の方が格式が高い。
- 抱き紋(だきもん)
胸紋、前紋のこと。生地巾の中心で肩山から4寸の位置に紋の天がくる。
- 伊達紋(だてもん)
江戸時代中期から流行し、絵や文字を家紋の代わりとして付けられたもので、文様に近い。色を多彩に使ったかなり大きなおしゃれ紋である。
- 単紋(たんもん)
家紋デザインの構成で、1つの紋で構成されたもの。2つ以上の紋で構成されたものは「複紋」と呼ぶ。
- ちらし紋(ちらしもん)
江戸時代中期に流行した飾り紋のこと。2~3種類の文様を組み合わせたもの。他に「よせ紋」「伊達紋」ともいう。
- 天(てん)
紋章の頭部分。紋の一番上のこと。
- 縫い紋(ぬいもん)
刺繍紋の事。カジュアル目的として家紋やおしゃれ紋を刺繍で表したもの。糸は色糸、白糸、金糸、銀糸など。縫い方も様々である。
- 花紋(はなもん)
お洒落紋の総称。家紋ではなく多彩で文様的なもの。「華紋」とも書く。大きなものが多い。
- 華紋(はなもん)
花紋のこと。多彩で大きなお洒落紋の総称。
- 貼付紋(はりつけもん)
切付紋(きりつけもん) とも言う。別の生地に描いた家紋を切り抜いて貼り付けたもの。古物の弱った生地の描き直しや変更に用いられる。また、貸衣裳などにも利用される。
- 一つ紋(ひとつもん)
五つ紋、三つ紋、一つ紋などの紋付きの中で最も略式とされたもの。一つ紋は背紋のみのこと。背筋、襟付けより1寸五分が紋の天。
- 日向紋(ひなたもん)
白抜きされた紋場に単線の上絵で紋章を表す。家紋表現方法では一番格式が高いとされる。略式には陰紋が用いられる。
- 文廻し(ぶんまわし)
上絵師が使う2本の竹の棒をつないだコンパス。市販のものは未完成品。それを上絵師が針と筆を組み合わせ自分に合った道具に作りあげる。
- 紅鏡(べにかがみ)
古い友禅技法で、鏡に見立てた紅色をバックに友禅を彩色する。他に藍鏡、白鏡がある。
- 前紋(まえもん)
抱き紋、胸紋のこと。前紋は2つ。両胸、生地巾の中央、肩山より4寸が紋の天。
- 三つ紋(みっつもん)
五つ紋よりは略式になり、一つ紋より格式が高い。一般的には、背紋1つと袖紋が2つ。背紋は背筋衿付けより1寸5分が紋の天。袖紋は両袖後ろ、生地巾の中央、袖山より2寸が紋の天。
- 胸紋(むねもん)
抱き紋、前紋のこと。前紋は2つ。両胸、生地巾の中央、肩山より4寸が紋の天。
- 目返し(めがえし)
一般的には模様の彩色用語。糸目糊を置いて彩色する友禅技法ではなく、本来白く上げるところを後から、糸目糊なしで彩色する技法。
- 目返し色上絵(めかえしいろうわえ)
白抜きした紋場に目返しを施し、さらに色上絵を組み合わせたもの。大宮華紋の技法。
- 紋洗い(もんあらい)
紋付きの染めの工程で紋糊を取り去った後、さらに紋場の不純物を洗い落としたり、より白く漂白する、紋入れの為の前処理の事。
- 紋入れ(もんいれ)
衣類、調度品などに紋章を入れる。あるいは染め抜きや刺繍など、加工すること。
- 紋入れ替え(もんいれかえ)
すでに加工してあった紋章を新たに加工し直す。または別の紋章に加工し直す。例えば染め物の場合に、汚れた家紋の描き直しや別の家紋に入れ直すこと。
- 紋抜き(もんぬき)
染め物の紋入れ加工の為、家紋の形に白く漂白する事。
- 紋糊(もんのり)
紋付きの染めの工程で地染めの前に紋の形に色が染まらぬよう伏せる糊(のり)の事。紋の形に置く場合はゴム糊。石持(円の形のこくもち)の場合はゴムとめんこ(紙を圧縮して糊でかためたもの)がある。
- 紋場(もんば)
紋章の形の場所のこと。
- 紋見本(もんみほん)
その家の家紋などを描きしるしたもの。紋帖に無い紋章には必要。
- 紋名(もんめい)
紋章の名称のこと。
- よせ紋(よせもん)
江戸時代中期に流行した飾り紋のこと。2~3種類の文様を組み合わせたもの。他に「ちらし紋」「伊達紋」ともいう。